はじめに:デジタル化の時代に迷走する中小企業と「見えない壁」
1.デジタル化が進む世の中と、取り残される現場
2020年代も半ばになり、デジタル化(DX)は大企業だけの話ではなく、中小企業が生き残るための必須条件になっています。
一般消費者向けのビジネスでも、企業間取引でも、お客様はインターネットで検索し、比較し、検討してから購入するのが当たり前になりました。
Webサイトは、ただの「会社の顔」である以上に、24時間365日休まず働く「最強の営業拠点」としての役割を期待されています。
しかし、現実はどうでしょうか。多くの中小企業で、Web活用はいまだに「片手間の仕事」として扱われ、その本来の力を発揮できていません。
「ホームページを作ったけれど更新が止まっている」「SNSのアカウントはあるけれど投稿がない」「広告を出しても効果が出ているのかわからない」といった状況がよく見られます。
その原因を深く掘り下げていくと、技術が難しいとか予算がないといった表面的な問題の奥に、もっと根深い「組織の壁」があることが見えてきます。
2.構造的な問題:「ひとりWeb担当者」の孤独と限界
中小企業のWeb活用において、最も深刻な問題の一つが、Web担当者の「孤立」です。
現場の声を聞くと、専任の担当者がおらず、総務や営業、広報などの他の仕事と兼任しながら、たった一人でWebサイトの更新、SNSの運用、広告の管理、記事の作成、さらには社内パソコンのトラブル対応まで任されているケースが非常に多いのです。
彼らは、社内に相談できる相手がおらず、上司や経営層からの理解も得られないまま、「成果を出せ」というプレッシャーにさらされています。
トップや上司の理解があれば、人手や予算を確保することもできますが、協力者がおらず、予算もつかないという状況では、担当者のやる気は下がる一方です。
最終的にはプロジェクトが止まってしまったり、担当者が辞めてしまったりすることにつながります。
これは個人の能力不足ではなく、経営層の「無理解」と「見て見ぬフリ」が生んだ、組織の仕組みそのものの欠陥だと言わざるを得ません。
3.経営層の悩み:見えない成果とコストへの警戒心
一方で、経営層を一方的に責めることもできません。経営者には、会社を存続させ、利益を確保するという重い責任があり、結果が出るかわからない投資に対して慎重になるのは当然の心理です。
Webの世界は専門用語が多く、その効果が見えにくいものです。「ページが見られた回数(PV)が増えました」「検索順位が上がりました」という報告を受けても、それが具体的に「いくらの利益」につながったのかが直感的にわからなければ、経営者はお財布の紐を緩めることはできません。
また、過去にWeb制作会社に安くない費用を支払ったのに、期待した成果が出なかったという「失敗体験」がトラウマになっているケースも少なくありません。
その結果、「Webはお金ばかりかかる」「うちはアナログで十分だ」という防衛本能が働き、必要な投資すらためらってしまうジレンマに陥っています。
このレポートでは、この「現場の疲弊」と「経営の躊躇」という二つの問題を同時に解決するための道筋を探ります。
それは、Web担当者が経営者の視点を持ち、経営者がWebの本質を理解するという、お互いが歩み寄るプロセスです。
第1章:Web担当者を襲う「兼任」と「孤立」の過酷な実態
Web活用の現場で起きている問題の奥深くには、担当者の人手不足と、それに伴う精神的・物理的な限界があります。ここでは、その実態を詳しく見ていきましょう。
1.任命の裏にある安易な認識と、仕事の中身が見えない問題
中小企業でWeb担当者が任命されるとき、その決め方は驚くほど安易なことが多いようです。
「若いからSNSに詳しそう」「前の会社で少しブログを書いていたらしい」といった曖昧な理由で、ある日突然「Web担当」に任命されます。
業務が決まっていない、マニュアルがない
問題なのは、任命する側(経営層・上司)が、Web担当者の具体的な仕事の範囲をわかっていないことです。
「ホームページの面倒を見る」というざっくりとした指示のもと、サイトの更新、サーバーの管理、セキュリティ対策、記事の作成、データの分析、広告運用、SNS対応など、専門性の異なるたくさんの業務が、一人の人間にのしかかります。
しかも、前任者からの引き継ぎ資料やマニュアルがないことが多く、担当者は手探りで仕事を進めるしかありません。
仕事の中身が見えなくなる(ブラックボックス化)
社内で誰も仕事の内容を把握していないため、Web担当者の仕事は周囲から見えなくなります。
「一日中パソコンに向かっているけれど、何をしているのかわからない」「遊んでいるのではないか」といった冷ややかな目で見られることもあります。
成果が出ても評価されにくく、トラブルが起きた時だけ責められるという理不尽な環境が、仕事をますます見えにくくさせてしまいます。
2.「何でも屋」になってしまうWeb担当者:力が分散する仕組み
中小企業のWeb担当者の多くは「兼任」です。これは、Web業務を「本業のついで」でできる程度のものと軽く見ている証拠です。
兼任業務のリスク
営業事務とWeb担当、広報とWeb担当、あるいは総務とWeb担当といった組み合わせが一般的ですが、ここには構造的なリスクがあります。
本業(営業事務や総務)は、日々の決まった仕事や急な対応が求められるため、緊急度が高いです。一方、Webサイトの更新やブログ執筆は、緊急度は低いけれど将来のために重要な仕事です。
兼任状態では、どうしても緊急度の高い本業が優先され、Web業務は後回しにされてしまいます。
「なんでもできる」という幻想
経営者は「一人で何役もこなすこと」を好む傾向がありますが、Web運用に関してはこれが裏目に出ます。
Webデザイン、文章作成、SEO、データ分析、プログラミングは、それぞれが異なる専門スキルを必要とする職種です。これらを一人の兼任担当者が全て高いレベルでこなすことは、物理的に不可能です。
しかし、社内の理解がないために「Web担当なんだから全部できるだろう」という過度な期待を寄せられ、担当者はキャパシティを超えてしまいます。
3.心の健康と離職のリスク:会社が負う致命的な損失
過酷な環境と孤立感は、Web担当者の心の健康を損ない、最終的には離職へとつながります。これは企業にとって、単なる欠員以上の損失をもたらします。
採用難とコストの増加
Webスキルを持つ人材は労働市場での価値が高く、人気があります。一度辞められると、同じくらいのスキルを持つ人材を採用することはなかなか困難です。
中小企業がWeb人材を募集しても応募が集まらず(専任であれば集まりやすい)、採用コストだけがかさんでしまうという事態が頻発しています。
ノウハウが消え、運用が止まる
Web担当者が一人で業務を抱え込んでいた場合、その退職は「Web運用の完全停止」を意味します。
パスワードがわからない、更新手順が不明、契約状況が把握できないといった事態に陥り、Webサイトは放置され、デジタル資産としての価値を失っていきます。
引き継ぎ資料があっても、引き継げない現実
通常、担当者が退職する際には「業務引き継ぎ」が行われます。しっかりとしたマニュアル(引き継ぎ資料)を作成し、後任者に説明すれば問題ないと思われがちです。
しかし、Web運用の現場では、この「引き継ぎ」が機能しないケースが非常に多いのです。
その大きな理由は、Web運用の仕事にはマニュアルに書けない「暗黙の知識(暗黙知)」がたくさん含まれているからです。
例えば、「炎上しないような言葉の選び方」や「自社のブランドの雰囲気に合わせた写真の選び方」、「トラブルが起きたときの緊急対応のコツ」などは、担当者のこれまでの経験や感覚に頼っている部分が大きいです。
これらは文章にするのが難しく、形式的なマニュアルにはなかなか残りません。
また、パスワードや契約情報の管理が個人任せになっていることも多く、退職後に「管理画面にログインできない」「サーバーの契約更新メールが届かない」といったトラブルも頻発しています。
結果として、マニュアルという「書類」は残っても、実際に運用を回すためのノウハウは引き継がれず、Webサイトが止まってしまうのです。
第2章:経営層の「無理解」を解剖する:心理と論理のズレ
Web担当者が直面する問題の根本には、経営層のWeb活用に対する理解不足があります。
しかし、これを単に「勉強不足」と決めつけるのはよくありません。経営者には経営者の考えがあり、リスクに対する鋭い感覚があります。
ここでは、経営層がなぜWeb活用に消極的になるのか、その心理的・論理的な背景を分析します。
1.「今のままでいい」という心理:「何もしないリスク」への鈍感さ
人間には、変化を避け、現状を維持しようとする心理的な傾向があります。経営者において、これは「過去の成功体験」へのこだわりや、「失敗への恐れ」として現れます。
「変えないこと」のリスク評価
かつて、松下幸之助氏は「現状維持どころか縮小せざるを得なくなる」と警鐘を鳴らしました。多くの経営者が「現状維持は衰退である」と認識しているはずです。
しかし、Web活用に関しては、「よくわからないものに投資して失敗するリスク」を大きく見積もり、「投資しないことによる機会損失のリスク(何もしないリスク)」を小さく評価してしまう傾向があります。
茹でガエルの危機
市場環境はデジタル化により激変していますが、その変化は日常の中ではゆっくりに見えることもあります。そのため、今日Web投資をしなくても、明日の売上が急減するわけではありません。
しかし、競合他社が着々とWeb集客の仕組みを作っている間に、自社の競争力は相対的に下がっていきます。
気づいた時には手遅れになる「茹でガエル」の状態こそが、現状維持の最大の恐怖です。
2.Webサイトへの誤解:ただの「看板」か、動く「営業装置」か
経営層の中には、Webサイトを単なる「会社の看板(電子パンフレット)」と考えている方が一定数いらっしゃいます。この認識のズレが、予算配分の歪みを生みます。
「作って終わり」の看板モデル
Webサイトを「看板」と捉えている場合、制作時のデザインにはこだわりますが、公開後の運用には関心を示しません。
「一度作ったのだから、あとは置いておけばいい」と考え、更新費用や改善予算を「無駄なコスト」とみなします。
しかし、情報は鮮度が命であり、数年前の情報が掲載されたままのサイトは、看板としての役割すら果たさず、むしろ企業イメージを悪くしてしまいます。
「育てる」営業装置モデル
攻めのWeb運用においては、Webサイトは「24時間働く営業マン」です。
見込み客を集め、商品の魅力を伝え、信頼を積み重ね、問い合わせや購入(コンバージョン)を獲得する役割を担います。
このモデルでは、サイト公開はゴールではなくスタートであり、日々のデータ分析と改善こそが重要となります。
経営者がこの「営業装置」としての認識を持たない限り、運用リソースへの投資は認められません。
3.費用対効果が見えにくいことで、判断が止まってしまう
Web活用が経営層に理解されにくい最大の理由は、その効果が決算書にすぐには現れにくい点にあります。
時間がかかる(タイムラグ)
SEO対策や記事による集客は、施策を行ってから成果が出るまでに数ヶ月〜年単位の時間がかかります。
短期的な四半期決算や月次売上を重視する経営者にとって、この長いタイムラグは「効果がない」と判断される要因になります。
広告費のような即効性のあるコストと比較され、「いつになったら元が取れるのか」と詰められることになります。
指標が複雑で、経営の話につながらない
PV(ページビュー)やCTR(クリック率)といったWeb特有の指標は、経営者にとっては馴染みが薄いものです。
担当者が「今月はPVが120%になりました!」と意気揚々と報告しても、経営者からは「で、結局いくら儲かったの?」と冷たく返され、会話が噛み合いません。
経営者が知りたいのは「アクセス数」ではなく「売上」や「利益」であり、Web担当者がその関係性を論理的に説明できないことが、不信感を招く原因となっています。
このコミュニケーションのギャップを埋めるためには、Web担当者が経営者の言葉を理解し、翻訳して伝えるスキルが不可欠となります。
次章では、その具体的な方法について解説します。
第3章:社内の壁を突破する「言葉の変換」技術
Web担当者と経営層の間には、深い「言葉の壁」があります。
担当者は「SEO」「サーバー」「UI/UX」といった専門用語で語り、経営者は「利益」「コスト」「リスク」「資産」といった経営用語で考えます。
この壁を突破し、協力を引き出すための最強の武器が「言い換え」と「たとえ話」です。
1.専門用語を使わずに、経営の言葉に置き換える
難しいことを、相手がすでに知っているわかりやすいことに置き換えて説明することで、納得感を劇的に高めることができます。
重要なのは、単なるたとえ話に終わらせず、そこから「だから投資が必要だ」という経営判断を引き出すような論理構成にすることです。
2.【実践例1】SEO対策を「不動産投資」として説明する
経営者は「費用(コスト)」と「投資(資産)」を明確に区別します。SEO対策が単なるコストではなく、将来にわたって収益を生む資産形成であることを伝えます。
| 項目 | 技術的な説明(Web担当者視点) | 経営的な言い換え(経営者視点) |
| SEO対策 | 検索エンジンの仕組みに合わせてサイトを最適化し、検索順位を上げる施策。 | 「Web上の好立地への移転」と「自社ビルの建設」。 |
| 広告 | クリック課金で即効性があるが、停止すると流入がゼロになる。 | 「賃貸店舗の家賃」。払い続けなければ客足は止まる掛け捨て費用。 |
| コンテンツ | ブログ記事や事例紹介ページを作成し、検索結果に表示させる。 | 「優秀な営業マンの採用・育成」または「資産の積み上げ」。 |
説得のロジック
「社長、Web広告は家賃のようなものです。払えば集客できますが、止めればゼロです。一方、SEO対策は自社ビルを建てるようなものです。初期投資と時間はかかりますが、一度検索の上位に表示されれば(一等地にビルが建てば)、広告費(家賃)を払わずに24時間365日、お客様を呼び込み続ける資産になります。
今、競合他社はWeb上の一等地を確保しようと建設ラッシュです。我々も今着工しなければ、将来高い家賃(広告費)を払い続けることになります」
3.【実践例2】サーバー管理を「店舗のセキュリティと機会損失」で語る
サーバー費用や保守費用は、経営者にとって「削減したい固定費」に見られがちです。これを「リスク管理」と「機会損失」の視点から再定義します。
| 項目 | 技術的な説明(Web担当者視点) | 経営的な言い換え(経営者視点) |
| サーバーダウン | アクセス集中や障害により、Webサイトが表示されなくなる状態。 | 「店舗のシャッターが勝手に閉まる状態」。お客様が来ているのに入店できない「機会損失」。 |
| セキュリティ対策 | SSL化やWAF導入により、サイバー攻撃や情報漏洩を防ぐ。 | 「店舗の警備システム」や「火災保険」。信用の毀損を防ぐ必須コスト。 |
| 表示速度改善 | ページの読み込み速度を高速化し、離脱を防ぐ。 | 「店舗の自動ドアの反応速度」。ドアが開くのが遅くて帰ってしまう客を減らす。 |
説得のロジック
「サーバーがダウンするということは、書き入れ時にお店のシャッターを閉めてしまうのと同じです。お客様がせっかく来店したのに、店に入れません。
これは単なる売上の損失(機会損失)だけでなく、『この店は営業していないのか』『管理がずさんだ』という信用の低下につながります。
安価なサーバーでコストを数千円削るリスクは、万が一のダウン時に発生する数十万円の損失と信用の低下に見合いません」
4.【実践例3】使いやすさの改善を「接客品質と営業効率」に置き換える
デザインの変更や使いやすさ(UI/UX)の改善は、「好みの問題」として片付けられがちです。これを「数値に基づいた営業効率の改善」として説明します。
| 項目 | 技術的な説明(Web担当者視点) | 経営的な言い換え(経営者視点) |
| 直帰率 | サイトを訪れたユーザーが、1ページしか見ずに離脱した割合。 | 「入店したが、商品も見ずにすぐ帰ってしまった客の割合」。 |
| CVR (成約率) | サイト訪問者のうち、問い合わせや購入に至った割合。 | 「来店客に対する成約率(営業マンの打率)」。 |
| EFO (入力最適化) | フォームの入力項目を減らし、入力完了率を高める施策。 | 「レジ待ち行列の解消」や「申込書の簡素化」。面倒で帰る客を減らす。 |
説得のロジック
「現在、当社のサイトの直帰率は70%です。これは、来店したお客様の10人に7人が『いらっしゃいませ』も聞かずに3秒で店を出てしまっている状態です。
どれだけ広告費(チラシ)を使って集客しても、店内の陳列や接客(UI/UX)が悪ければ、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
まずはバケツの穴をふさぎ(成約率改善)、営業効率を高める投資が必要です」
5.共通言語としての目標設定:利益に直結する数字で話す
言い換えの仕上げとして、目標設定における共通言語を作ります。Web担当者はPVやセッション数を追いがちですが、経営者は最終的な成果しか見ていません。この間を埋める図式を作成します。
- 経営目標(KGI)
会社の最終ゴール(例:年間売上1億円、Web経由の新規顧客100件)22。 - 中間指(KPI)
ゴールを達成するためのプロセス(例:商談化数、資料請求数、獲得単価)。
対話の例
「社長、Webサイトの目標を『Web経由の売上3,000万円』と設定しましょう。そのためには、成約率20%として『商談数150件』が必要です。さらに商談化率10%とすると『資料請求1,500件』が必要です。
現在のサイトでは資料請求が月50件しかありません。これを月125件にするために、今の直帰率を改善するリニューアル投資が必要です」
このように、全ての数字を「経営目標(売上)」から逆算して説明することで、Web施策が「コスト」ではなく「目標達成のための必要経費」として認識されるようになります。
第4章:説得力を最大にする「データ活用」アプローチ
経営層を動かすためには、情熱や感覚的な言葉だけでは不十分です。客観的な「数字」と「事実」に基づいたデータが必要不可欠です。
特に「競合他社の動き」は、経営者の競争心を刺激し、危機感を持ってもらうための最も強力な材料になります。
ここでは、無料で使えるツールを使って、説得力のあるデータを集め、稟議を通すための資料作成術を解説します。
1.競合分析で危機感を持ってもらう:ライバルとの比較を見せる
「我が社もWebに力を入れるべきです」と正論を言うよりも、「競合のA社は、Webサイトを毎月更新しており、そこから月に推定〇〇件の問い合わせを獲得しているようです。一方、我が社は……」と伝える方が、経営者はすぐに反応します。
競合他社と比較することで、自社の立ち位置と課題が浮き彫りになり、経営者の「負けたくない」という心理に火をつけることができます。
2.【実践】Wayback Machineを使った「競合の投資履歴」の追跡
インターネット上の過去のWebサイトの状態を見ることができる「Wayback Machine(ウェイバックマシン)」というツールがあります。これを単なる過去の閲覧ではなく、「競合がどれくらいWebに投資しているかを調べるツール」として活用します。
調査の手順
- 競合サイトのURLを入力し、過去のカレンダー(1年前、3年前など)をクリックします。
- 過去のトップページ、サービスページ、採用ページのデザインや内容を確認します。
- 現在と比較し、「何が変わったか」をリストアップします。
見るべきポイント
- コンテンツの増加
ブログ記事が増えているか? 事例紹介が充実しているか? → 集客への投資姿勢。 - お問い合わせ導線の変化
「お問い合わせ」ボタンが目立つ場所に移動しているか? チャットボットが導入されたか? → 成約率向上への意識。 - スマホ対応
過去はパソコン向けだったのが、スマホで見やすくなっているか?
説得のロジック
「競合A社の3年前と現在のサイトを比較しました。彼らはこの3年間で『お客様の声』を20件追加し、コラムを毎週更新しています。明らかにWebを営業資産として育てています。彼らが投資を続けている間に、何もしないままで差が開く一方です」。
3.【実践】SimilarWebなどを使った「市場シェアと集客経路」の調査
「SimilarWeb(シミラーウェブ)」などの競合分析ツール(無料版含む)を使えば、競合サイトの推定アクセス数や、どこから人が来ているのかを把握できます。
調査の手順
- 競合サイトのURLを入力し、分析レポートを表示させます。
- 「訪問数」「直帰率」「平均滞在時間」などを確認します。
- 「流入経路」で、検索、直接入力、SNSなどの比率を見ます。
見るべきポイント
- アクセス規模
自社と比較してどれくらいの差があるか?(例:自社1,000 vs 競合10,000) - 集客の質
検索流入が多い場合、SEO対策が成功している証拠。広告が多い場合、予算を投下している証拠。
説得のロジック
「競合B社のサイトへのアクセス数は、当社の約5倍です。しかも、その6割が『自然検索』から来ています。つまり、彼らは広告費をかけずに毎月数千人の見込み客を集める仕組みを完成させています。当社が広告に頼っている間に、彼らは資産型の集客を行っています」
4.決裁を勝ち取る稟議書の構成:理屈と感情を組み合わせる
集めたデータを基に、実際に稟議書や提案資料を作成します。
稟議が通らない理由は、主に「顧客理解不足」「社内調整不足」「資料の不備」にあります。
以下の構成案を参考に、経営層の決断を促す資料を作成してみてください。
稟議書・提案書の構成テンプレート
- 結論(エグゼクティブ・サマリー)
- 提案内容の要約と、期待される最大の成果。
- 背景と目的(なぜ今なのか?)
- 市場環境の変化(スマホ普及、非対面営業の重要性)。
- 競合他社の動き(Wayback Machineなどで得たデータをグラフ化して提示)。
- 「なぜ今、やる必要があるのか(何もしないリスク)」を強調。
- 現状の課題
- 自社サイトの問題点(更新頻度、スマホ未対応、アクセス数低迷、直帰率の高さ)。
- Web担当者の現状(人手不足、孤独な運用、兼任による限界)。
- これによる機会損失の試算(「月間〇〇件の問い合わせを取り逃がしている可能性」)。
- 解決策と施策内容
- 具体的なアクションプラン(リニューアル、ブログ運用、外部パートナー導入)。
- 「伴走型支援」の導入による体制強化(次章で詳しく説明します)。
- 費用対効果(コストとリターン)
- 投資額: 初期費用と月額ランニングコスト。
- 回収計画: 「問い合わせ1件あたりの利益×増加件数」で、何ヶ月で投資回収できるかを明示。
- 資産価値: 将来的な広告費削減効果の試算。
- リスクと対策
- 成果が出ない場合のリスクヘッジ(改善のサイクル、契約の柔軟性)。
- 情報漏洩や炎上リスクへの対策。
- 結論と承認依頼
- 具体的な承認事項。
- 「現状維持は後退である」というメッセージで締めくくる。
特に重要なのは、「費用」ではなく「投資」としての側面を強調することです。
「ホームページを作りたい」ではなく、「Webを使って売上を上げる仕組みを作りたい」という文脈で提案することが、承認への近道となります。
第5章:運用体制の正解:「丸投げ」と「自社のみ」の間で
Web運用の体制には、大きく分けて「完全自社運用(インハウス)」「業務委託(丸投げ)」「伴走型支援(パートナー)」の3つのパターンがあります。
中小企業において、最初の2つは失敗に終わるリスクが高いです。
ここでは、なぜ既存のモデルが機能しにくいのか、そしてなぜ「伴走型」が良い解決策となるのかを、経済的な合理性と組織論の観点から解説します。
1.完全な自社運用(インハウス)の罠:属人化と情報不足
「コストを抑えたい」「社内にノウハウを蓄めたい」という理由で選ばれる完全自社運用ですが、中小企業にとっては茨の道です。
専門知識が足りず、最新情報についていけない
Webマーケティングの世界は日々進化しています。Googleのルールの変更、SNSの仕組みの変化、法律の改正(ステマ規制など)、新しい広告手法など、常に最新情報を追いかけなければなりません。
専任のマーケティングチームを持つ大企業ならいざ知らず、他の業務と兼任している中小企業の「ひとり担当者」が、これら全てを追跡し、対策を講じることは不可能に近いです。
結果として、数年前の古い知識に基づいた我流の運用になり、効果が出ないまま放置されてしまいます。
人に依存するリスク(属人化)
「Webのことは○○さんにしかわからない」という状態は、企業にとって重大な経営リスクです。その担当者が退職したり、病気で休んだりすれば、Webサイトは瞬時に止まってしまいます。
また、担当者が退職する際、引き継ぎ資料がなければ、後任者はゼロからスタートしなければならず、採用コストや教育コストも莫大になります。
自社運用は「人が定着し続ける」ことを前提としたモデルであり、人の入れ替わりがある現代においては弱点が多いのです。
マニュアルがあっても引き継げない「暗黙知」の壁
「しっかりしたマニュアルがあれば大丈夫」と思われるかもしれませんが、完全な自社運用では、ここにも落とし穴があります。
Web運用の現場では、「なぜその写真を選んだのか」「なぜその言葉を使ったのか」といった、マニュアルに書けない「感覚的な判断(暗黙知)」が非常に重要です。
また、Webの仕組みやトレンドはすぐに変わるため、半年や1年でマニュアル自体がすぐに古くなってしまい、役に立たなくなることも多いのです。
2.外部への丸投げの弊害:ノウハウがたまらず、業者に依存してしまう
「社内に人がいないから」「ノウハウはないから」「面倒だから」と、制作会社やコンサル会社に全てを任せる「丸投げ」スタイルもまた、多くの問題をはらんでいます。
ノウハウが蓄積されない
丸投げ運用では、社内に知識や経験が全く残りません。
どのような施策が行われ、なぜ成功したのか(あるいは失敗したのか)が社内で共有されないため、企業としての学習が進みません。
これは、永遠にその業者に依存し続けなければならないことを意味し、将来的な契約解除や値上げ交渉の際に圧倒的に不利な立場に置かれます。
自社の良さが伝わらない
外部の業者は、Webのプロではあっても、その企業のビジネスや商品、社風のプロではありません。
丸投げにすると、表面的なテクニックだけの運用になり、企業の独自性や熱意のこもったメッセージが発信されず、顧客の心に響かないコンテンツになりがちです。
また、成果が出なくても業者は責任を取らず、「契約通りの作業はしました」で終わるリスクもあります。
3.第3の選択肢:「伴走型(パートナー)」モデルの経済的なメリット
そこで推奨されるのが、自社運用と外注の良いとこ取りをした「伴走型(パートナー)」モデルです。「インコンフォルメ」のようなサービスがこれに当てはまります。
伴走型とは何か?
伴走型支援とは、業者が全ての作業を代行するのではなく、クライアント企業のWeb担当者とチームを組み、戦略立案から実行、効果測定までを「共同」で行うスタイルです。
コンサルタントと一緒に、二人三脚で走りながらゴールを目指すイメージです。
運用モデル比較表
| 評価項目 | 完全自社運用 (インハウス) | 業務委託 (丸投げ) | 伴走型支援 (パートナー) |
| コスト | 人件費のみ (見かけ上安い) | 高額になりがち | 中程度 (コスパが良い) |
| 専門性 | 低 (個人の力量依存) | 高 (業者のスキル依存) | 高 (プロの知見+自社の業界知識) |
| ノウハウ蓄積 | 人に依存 (退職で消える) | なし (業者にたまる) | 社内に蓄積される (教育効果) |
| スピード | 遅 (兼任で後回し) | 契約範囲内で対応 | 速 (役割分担で効率化) |
| 持続性 | 担当者が辞めると停止 | 契約終了で停止 | 自走できる体制を目指せる |
| リスク | 属人化・ガラパゴス化 | 業者への依存 | リスク分散・共創 |
教育と実務のハイブリッド
伴走型の最大の利点は、「実務を進めながら、担当者を育てられる」点にあります。
SEOのキーワード選定方法や、アクセス解析の見方、記事の構成案の作り方など、プロのノウハウを間近で学びながら、実際のサイト改善を進めることができます。
これにより、担当者のスキルアップとやる気が同時に向上し、将来的には自社だけで運用できる「自走」状態を目指すことも可能になります。
役割分担による効率化
記事の原案作成や写真撮影など、自社でしかできない(あるいは自社の方が速い)ことは自社で行い、高度なキーワード分析、技術的なSEO、デザイン調整などはプロに任せるという柔軟な役割分担が可能です。
これにより、限られた予算と人手の中で最大の成果を上げることができます。「インコンフォルメ」のようなサービスは、単なる代行業者ではなく、Web担当者の「家庭教師」兼「強力な助っ人」として機能し、社内の壁を突破する原動力となります。
第6章:結論と提言:組織として成功するための道筋
こ中小企業のWeb活用を阻む最大の敵は、外部環境や技術ではなく、「社内の無理解」と「不全な運用体制」にあることが明らかです。
Web担当者の孤独、経営層の投資へのためらい、そして両者の間のコミュニケーション不足が、Webサイトという貴重な資産を眠らせています。
1.Web担当者が明日から始めるべきアクション
- 「孤独」からの脱却を宣言する
自分一人で全てを抱え込むのをやめ、「できないこと」と「必要なリソース」をはっきりさせましょう。そのために、まずは現状の業務量と成果を見える化することから始めてください。 - 経営層への「翻訳機」になる
専門用語を捨て、経営者の言葉(利益、リスク、資産、機会損失)で語る練習をしましょう。たとえ話を使い、Web施策の価値を経営課題の解決策として再定義してみてください。 - データという「武器」を手にする
Wayback MachineやSimilarWebを使い、競合他社の動きを数字で示しましょう。「他社は動いている」という事実は、経営者を動かす最強のカードです。
2.経営層が見直すべきWeb戦略の位置づけ
- Web活用を「投資」と定義する
Web関連費用を「コスト(削減対象)」ではなく、「投資(リターンを生む資産)」として捉え直してください。現状維持は「節約」ではなく「機会損失の拡大」であることを認識しましょう。 - Web担当者を「経営のパートナー」とする
担当者を単なる作業員として扱わず、マーケティング戦略の実行部隊として権限と予算を与えてください。そして、孤立させないための体制(伴走型支援の導入など)を整える責任を持ってください。 - 「伴走型」支援の検討
丸投げでも完全自社運用でもない、第3の選択肢としての「伴走型」サービスの導入を検討してみてください。これにより、社内にノウハウを蓄積しつつ、リスクを最小限に抑えてWeb活用を推進できます。
Web活用は、一朝一夕に成るものではありません。しかし、正しい理解と正しい体制、そして適切なパートナーがいれば、中小企業にとってこれほど強力な武器はありません。
今こそ、社内の壁を突破し、Webサイトを「コスト」から「収益を生む資産」へと変革する時です。
その変革は、このレポートを手に、担当者が経営者のドアをノックし、経営者がその扉を開くことから始まります。
よろしければ、インコンフォルメの無料相談もご活用ください。
免責事項: 本レポートは調査に基づいた分析情報を提供するものであり、特定の成果を保証するものではありません。各施策の実施にあたっては、各企業の個別状況を考慮し、専門家と相談の上で意思決定を行ってください。


