はじめに:「更新頻度が高ければ良い」という時代の終わり
ひと昔前、ウェブマーケティングの世界では「コンテンツこそが王様」と言われ、「とにかくブログの更新頻度を上げれば、検索エンジン(Google)に見つけてもらいやすくなり、サイトの評価が上がる」と信じられていた時期がありました。
その結果、多くの企業や個人が「今日はスタッフみんなでランチに行きました」「雨が降ってきましたね」といった、いわゆる「日記」のような記事を毎日せっせと書き続けてきました。
しかし、2020年代半ばとなった現在、この「とりあえず更新しておけば良い」という考え方は、通用しなくなったどころか、実はウェブサイト全体にとってマイナス(逆効果)になりました。
Googleは現在、AI(人工知能)を活用した非常に高度な評価システムを導入しており、記事の「数」ではなく、読者にとって本当に役に立つ「質」を厳しくチェックしています。
この記事では、「とりあえず更新」という古い習慣が、なぜ今の検索エンジンの仕組みにおいて「評価を下げる原因」になってしまうのか、その技術的な理由を徹底的に解説します。
また、最近増えている「生成AIを使って記事を大量に作る」という手法が抱える大きなリスクについても、詳しくお話しします。
「日記ブログ」の無意味さと、SEO記事との決定的な違い
多くの企業サイトで見かける「スタッフ日記」や「日常の報告」は、検索エンジンの目から見ると、単に価値がないだけでなく、サイト全体の専門性を薄めてしまう「ノイズ(雑音)」になってしまうことがあります。
なぜ日記ブログがビジネスにおいて危険なのか、その構造的な違いから見ていきましょう。
情報の寿命が違う:「フロー型」と「ストック型」
インターネット上の記事は、その情報の性質によって大きく2つに分けられます。
フロー型コンテンツ(日記・SNS的な投稿)
- 特徴
「今日のランチはおいしかったです」「今日の天気は晴れです」といった、その瞬間にしか意味を持たない情報です。 - 検索されるか?
ほとんど検索されません。例えば、ユーザーが検索するときに「ある会社の、あるスタッフが、ある日に食べたランチ」を探すことはまずありません。 - 資産価値
時間が経つとすぐに価値がなくなり、過去の記事として埋もれてしまいます。将来にわたってお客さんを連れてくる「資産」にはなりません。
ストック型コンテンツ(SEO記事)
- 特徴
「法人税を節税する方法」「業務用エアコンの正しい選び方」といった、ユーザーの悩みや疑問を解決する情報です。 - 検索されるか?
「節税 方法」などのキーワードで検索され続け、長い期間にわたって読まれます。 - 資産価値
時間が経っても価値が下がりにくく(または少しの手直しで維持でき)、継続的にサイトへ人を呼び込む「資産」となります。
「とりあえず更新」をしてしまう人は、この2つを混同してしまい、本来資産を積み上げるべき場所に、すぐに消えてしまう情報を溜め込んでしまっているのです。
検索エンジンは「情報整理されたデータベース」であり、「日記帳」ではありません。整理されていない情報が増えることは、データベースの品質を下げる行為と言えます。
「誰に向けて書いているか」のズレとブランドへの悪影響
SEO(検索エンジン最適化)の本質は、「検索する人の質問に対して、最適な答えを用意すること」です。しかし、日記ブログにはこの視点が欠けていることがほとんどです。
検索する人の意図とのミスマッチ
例えば、税理士事務所のサイトで「今日のランチ」という記事を書いたとします。仮に「ランチ」という言葉で検索に引っかかったとしても、検索した人が知りたいのは「近くの美味しいお店の情報」であり、「知らない税理士の食事風景」ではありません。
ページを開いたユーザーは「期待した情報じゃない」と感じて、すぐにブラウザの「戻る」ボタンを押します。
Googleは、この「すぐに戻る行動」を見て、「このサイトはユーザーを満足させていない」と判断し、マイナスの評価を下します。
ビジネスにおける「公私混同」のリスク
ビジネスの観点からも、目的のない日記はブランドイメージを損ないます。
お客さんはプロとしての知識や信頼を求めてサイトを訪れます。そこに専門性とは関係のない私的な日記や、感情的な書き込み、質の低いポエムのような文章が並んでいれば、プロとしての威厳や信頼感は失われてしまいます。
「社長ブログ」などで戦略のない日常報告をするのは、親近感どころか「ビジネスに対する姿勢が甘い」というネガティブな印象を与えかねません。
最悪の場合、不適切な発言が炎上を招き、取り返しのつかないダメージを受けることもあります。
目的のない更新が招く、技術的なSEOリスク
「更新しないよりはマシだろう」と考えるのは危険です。質の低い記事が増えることは、プラスマイナスゼロではなく、明確な「マイナス」として作用します。
ここでは、その技術的な仕組みを解説します。
「共食い(カニバリゼーション)」による評価の分散
「とりあえず更新」を続けていると、過去に何を書いたか忘れ、似たようなテーマで何度も記事を書いてしまうことがよくあります。これを専門用語で「カニバリゼーション(共食い)」と呼びます。
Googleは通常、1つの検索キーワードに対して、1つのサイトから最も適切な1ページだけを表示しようとします。
しかし、同じサイト内に「SEOとは」というテーマの記事が5つもあると、Googleはどのページを評価していいのか迷ってしまいます。
- パワーの分散
外部からのリンクやサイト内での評価が、1つの強力なページに集まらず、5つのページにバラバラに分散してしまいます。結果として、どのページも競合サイトに勝てず、全滅してしまいます。 - 順位の不安定化
日によって表示されるページがコロコロ入れ替わり、検索順位が安定しません。 - 機会の損失
本来見てほしい「サービスの申込みページ」ではなく、質の低い「日記的な感想記事」が検索結果に出てしまい、せっかくの訪問者がお客さんにならずに帰ってしまうことが起きます。
「インデックスの肥大化」とサイト品質の低下
「インデックスの肥大化」とは、検索エンジンのデータベースに、価値の低いページが大量に登録されてしまっている状態のことです。
Googleの最新の評価システム(ヘルプフルコンテンツシステムなど)は、ページ単体だけでなく、サイト全体の記事の品質を見ています。
もしサイトに1,000ページあり、そのうち800ページが「中身のない日記」や「低品質な量産記事」だった場合、サイト全体の「役立つ情報の割合」は非常に低いと判断されます。
Googleはこの割合を重視しており、低品質なページが大量にあることは、サイト全体の評価を下げる「重り」になります。
その結果、本来であれば上位に表示されるべき高品質な記事までもが、サイト全体の低い評価に引きずられて順位を落としてしまうのです。
検索ロボットの巡回リソース(クロールバジェット)の無駄遣い
Googleの検索ロボット(クローラー)が1つのサイトを見て回れる能力や時間には限りがあります。これを「クロールバジェット(巡回予算)」と呼びます。
無意味なページを大量生産することは、この貴重なリソースを無駄遣いすることになります。
- 新しい記事が見つからない
ロボットが低品質な過去の記事を見て回るのに時間を取られ、新しく書いた重要な記事や、内容を修正した記事を見つけるのが遅れてしまいます。 - 「未登録」の増加
ロボットが回ってきても、「このページは登録する価値がない」と判断されるページが増え、管理画面(サーチコンソール)で「クロール済み・インデックス未登録」というエラーが積み上がります。これは、記事制作の努力が無駄になっていることの明確な証拠です。
ドメインパワー(サイトの基礎体力)の低下
サイトの信頼性や強さを示す「ドメインパワー」という概念があります。低品質な記事が乱立していると、サイトの専門テーマがぼやけ、サイト内のリンク構造が複雑になるため、このドメインパワーが育ちにくくなります。
「何の専門サイトなのか不明確」とGoogleに判断されたり、重要なページへ送るべき評価パワーの流れが滞ったりすることで、サイト全体が弱くなってしまいます。
生成AIによる「質の低いSEO記事」量産のリスクとペナルティ
ChatGPTなどの生成AIが登場し、記事作成の手間は劇的に減りました。簡単な記事であれば、1日に10記事でも20記事でも、やり方によっては100記事でも200記事でも作ることができるようになりました。
しかし、生成AIを使って検索キーワードを含む記事を「とりあえず大量に作って公開する」という手法は、現在、最も危険な戦略の一つです。
Googleの新しいスパム対策:「大量生成されたコンテンツの悪用」
2024年3月、Googleはスパムに関するポリシーを大幅に改定し、「大量生成されたコンテンツの悪用(Scaled Content Abuse)」を新たな違反行為として定義しました。
重要なのは「手段」ではなく「目的」
Googleは「AIを使うこと」自体を禁止しているわけではありません。むしろ、AIを使って記事を書くことは当たり前になってきています。問題なのは、記事を作る「目的」です。
検索順位を上げることを主な目的とし、読者にとって価値が低い、またはオリジナリティのないコンテンツを「大量に」生成する行為は、AIで作ろうが人間が書こうが、違反となります。
具体的な数字は公表されていませんが、これまでの運用に比べて不自然に記事数が急増した場合(例:月10本だったのが急に月1,000本になるなど)は、監視システムに検知される可能性が高くなります。
AIを見抜くAI:「SpamBrain」
GoogleはAIによるスパムに対抗するために、Google自身もAIを使っています。「SpamBrain(スパムブレイン)」と呼ばれるシステムは、日々進化するスパムの手口を学習し、低品質なコンテンツを見抜いています。
内部の分析によると、「記事が増えるスピード」と「記事の質」のバランスが崩れている場合や、AI特有の文章パターン、他サイトの情報をただつぎはぎしただけの構成などを、非常に高い精度で見破るとされています。
生成AI記事が抱える品質リスク
もっともらしい嘘(ハルシネーション)の危険
生成AIは、息をするように嘘をつくことがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
存在しない製品機能や誤った価格、架空の法律や判例を記事に書いてしまった場合、企業の信頼は地に落ちます。
最悪の場合、嘘の情報でお客さんに損害を与え、訴訟に発展するリスクさえあります。
命やお金に関わる分野(YMYL)での致命傷
医療、金融、法律などの「YMYL(Your Money or Your Life:人々の生活や資産に重大な影響を与える分野)」において、Googleの評価基準は極めて厳しいものです。
専門家のチェックが入っていないAI記事は、検索順位がつかないだけでなく、サイト全体へのペナルティを招く原因になります。
著作権侵害のリスク
生成AIは既存のデータを学習して文章を作っているため、学習元の記事や画像にそっくりなものを作ってしまうことがあります。
これにより、知らず知らずのうちに他者の著作権を侵害してしまい、法的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
そもそも検索結果に載らない
独自性がなく、どこにでもある情報の焼き直しに過ぎないAI記事は、Googleによって「価値のないコンテンツ」と判断され、検索結果のデータベースに登録(インデックス)すらされないケースが増えています。
一時的に登録(インデックス)されたとしても、徐々にデータベースから削除されていきます。
AI検索(SGE)時代の到来と、アクセスの激減
Google検索に、AIが回答を自動生成する機能「AI Overviews」が導入されたことで、SEOの前提が根底から覆りつつあります。
「検索して終わり」の時代
AI Overviewsは、ユーザーの質問に対して、検索結果の一番上にAIが作った回答を表示します。
ユーザーはAIの回答だけで満足し、その下のリンクをクリックせずに検索を終了する「ゼロクリック検索」が増えています。
調査によると、AIの回答が表示された場合、検索1位のサイトであってもアクセス数が30%〜60%減少する可能性が指摘されています。
特に、「〜とは」といった言葉の意味や、単純な事実、一般的なノウハウなどの「基本的な情報」を提供するサイトは、AIに役割を奪われ、壊滅的な打撃を受けると予測されています(すでに打撃を受けているサイトも多いです)。
「引用」されるための新しい基準
これからの時代に生き残るためには、AIが作る回答の「ソース(情報源)」として引用され、リンクが表示される必要があります。そのためには、今までとは違う基準が求められます。
- 一次情報の重要性
AIは事実を作るために、信頼できる情報源(一次情報)を探します。他サイトのまとめに過ぎない二次情報は引用されにくいです。独自のデータ、調査結果、専門家の見解など、他では得られない情報を持っていることが重要です。 - 信頼性の証明(E-E-A-T)
誰が書いたか、どのような経験に基づいているかが、AIが信頼性を判断する重要な要素になります。
戦略的撤退と再構築:「記事の断捨離」
「とりあえず更新」で溜まってしまった負の遺産(低品質な記事)をどうすべきでしょうか。答えは「削除」または「統合」です。これを「コンテンツプルーニング(剪定)」と呼びます。
記事を減らすことで評価が上がる
枯れた枝を切り落とすことで木全体に栄養が行き渡るように、サイト内の不要な記事を削除することで、サイト全体の健康状態を回復させることができます。
海外の大手メディアや通販サイトの事例では、数千ページ規模で低品質なコンテンツを削除した結果、残った高品質なページの検索順位が上がり、全体のアクセス数や売上が大幅に増加したという報告があります。
記事の仕分け基準
すべての過去記事を削除するわけではありません。以下の基準で仕分けを行います。
- 削除
アクセスが全くない、他のサイトからのリンクもない、内容が古い・間違っている、日記、重複している記事。これらは完全に削除します。 - Noindex (ノーインデックス)
検索エンジンからの評価は低いけれど、特定のお客さん(既存顧客など)には見せたいページ。検索結果には出さない設定(noindex)にします。 - 統合 (リダイレクト)
テーマが被っている記事(カニバリゼーションを起こしている記事)。評価の高い1つの記事に内容をまとめ、古い記事からは自動転送(リダイレクト)をかけます。 - リライト (更新)
良い内容だが順位が低い、情報が少し古い記事。最新情報を追加し、独自性を強めて書き直します。
「せっかく書いたのにもったいない」という気持ち(サンクコスト効果)が邪魔をするかもしれませんが、誰も読まない低品質な記事を放置することは、サイトにとって「維持費」がかかり続ける借金のようなものであると理解しましょう。
AI時代への適応:「人間味」と「体験」
AIが全盛の時代において、逆に価値を高めているのが「人間味」です。
Googleは「Hidden Gems(隠れた名作)」というアップデートを行い、個人の体験や掲示板での議論など、実体験に基づくコンテンツの評価を高めています。
「経験(Experience)」の重要性
Googleの品質評価基準には、「E-E-A-T」があります。経験 (Experience)・専門性 (Expertise)・権威性 (Authoritativeness)・信頼性 (Trustworthiness)の頭文字をとった概念です。
生成AIは膨大な知識を持っていますが、実際に製品を使ったり、現地に行ったり、失敗したりした「経験」は持っていません。あなたの「経験」はあなたにしかない「経験」で、貴重な一次情報となります。
「一般的な解説」はAIに任せ、人間は「やってみた」「失敗した」「こう感じた」という主観的な体験談や、一次情報を発信することに特化すべきです。これこそが、AI量産記事との差別化になり、Googleからも高く評価されるポイントです。
人間が必ず関与する (Human-in-the-Loop)
AIを業務に活用する際は、必ず人間の判断を介在させる「Human-in-the-Loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」という体制を作る必要があります。
- AIの役割
アイデア出し、構成案の作成、下書き、データの整理、校正。 - 人間の役割
企画(誰に何を伝えるか)、事実確認(嘘がないか、ファクトチェック)、独自体験の追加、倫理的な判断、最終承認。
人間が最終責任者として内容を精査し、ブランドらしさを守り、法的なリスクを回避する。これにより、AIの効率性と人間の信頼性を両立させることができます。
結論:量から質への完全な転換
「とりあえずブログ更新」は、もはや通用しないどころか、企業のデジタル資産を傷つける危険な行為です。
検索エンジンは、目的のない更新を「ノイズ」とみなし、AIによる粗製乱造を「スパム」と判定するシステムを完成させつつあります。
今後の戦略において求められるのは、以下の3点への完全な転換です。
- 停止
目的のない日記更新や、低品質なAI記事の量産をすぐにやめる。 - 剪定
過去の低品質なコンテンツを整理・削除し、サイトの健康状態を回復させる。 - 集中
リソースを「量」から「質」へ集中させ、AIには真似できない「独自の体験」や「一次情報」に基づいた、本当にユーザーの役に立つ記事だけを作る。
AIなどの情報が溢れかえるインターネットにおいて、最後に残る価値は「信頼できる人間の声」です。
更新頻度という表面的な数字を追うのをやめ、一つ一つのコンテンツが持つ意味と価値に向き合うことこそが、唯一の生き残る道となります。


